寺家ふるさと村のモノづくりの祭典「寺家回廊」をリポート!

都心へのアクセスも良く、洗練された住宅街のイメージが強い横浜市青葉区。
少し郊外に足を伸ばせば緑豊かな自然が広がる地域でもあります。

以前に青葉区の寺家町にて開催された、地産地消のマルシェを訪れて以来、すっかり魅力に取り憑かれてしまった寺家ふるさと村。
毎年秋には寺家ふるさと村全体でアートとモノづくりのイベントが開催されているというニュースを聞き、早速訪れてみました。

寺家ふるさと村は、東急田園都市線青葉台駅からバスで15分ほどの場所にある農業特区です。山に囲まれた地形を活かした土地に、今では横浜では珍しくなった田んぼや畑が広がり、それを取り囲むように広大な里山が存在します。

日本人が「懐かしい」と感じる原風景が残され、訪れた人は「となりのトトロの世界みたい!」と里山の様子を表現する方もいらっしゃいます。

数々の工房やギャラリーが点在するアーティストの町?!

寺家町を訪れた10月の終わりは、最後の稲刈りが終わる時期でした。刈り取られた稲穂が田んぼにかけられ、秋の豊かな実りの時期を迎えています。

今まで農業が盛んな場所だとばかり思っていましたが、実は寺家ふるさと村は、里山の魅力に惹かれて様々な作家やアーティストが工房やアトリエを構える地なのだそうです。

そんなふるさと村ゆかりのアーティストが年に一度、様々な作品を展示・販売を行うイベントを「寺家回廊」といい、今年で16回目を迎えます。
収穫を終えた村全体が、秋の数日だけアートとクラフトのイベントに彩られ、あちこちでギャラリーやワークショップが開催される、寺家町ならではの催しです。

絵画・陶芸・木工など寺家ゆかりのアーティストの作品を展示

展示会といっても、場所は里山。
美術館があるわけではありません。

寺家回廊の一番の魅力とも言えるのが、里山の自然を活かしたインスタレーション作品です。
インスタレーションとは、展示する環境や過程も作品の一部として楽しむ鑑賞方法のことです。目で見るだけでなく、鑑賞する人たちもその作品の一部となり、体全てを使って作品を味わうことができます。

春から夏の間は田んぼや畑として農作物が育てられていた場所が、収穫が終わった秋の数日間だけアートな空間に変わるのです。

訪れた人たちも、ただ目で見て作品を鑑賞するだけでなく、アートの一部として全身で作品に触れることができます。
考えるだけで、何だかワクワクしてしまいますね。

子どもと一緒でも楽しめる?!里山を利用したインスタレーション

今年の寺家回廊で訪れたインスタレーション展示をいくつかご紹介します。

寺家回廊の拠点であるギャラリースペース、JIKE STUDIOの近くの畑では、寺家の森にアトリエを構える彫刻家、佐藤忠さんの作品が展示されていました。
鉄による幾何学的な彫刻作品で、畑の中に重厚な鉄のモチーフの数々が展示されているのは異質なようでもあり、自然と土に馴染んでいるようでもあります。一度見たらずっと記憶に残る、独特な雰囲気を持つ作品でした。

佐藤さんは、寺家にアトリエを構えて20年になるそうです。
寺家回廊の他にも、平塚市美術館での展覧会の情報もあり、精力的に活動されています。

同じくJIKE STUDIOそばの畑では、アーティスト3名のユニットであるkikikiの共同制作を鑑賞することができました。

休耕中の畑に突然現れた立体的な白いキャンバスに、自然の音に耳を傾けながら3人のアーティストがインスタレーションを制作していて、見る角度によって違った風景を発見することができます。
今年は「おばけに変身!お面をつくろう」というワークショップもあり、ちょうどハロウィンの季節と重なってお子様も楽しく参加できるイベントが開催されていました。

ふるさと村入り口の、熊野神社の近くの田んぼでは、横浜美術大学の加藤良次教授による広大なインスタレーションが出現していました。

稲刈りが終わった田んぼが不思議な空間に変わっていて、イベント中は特別に田んぼの中に入ることができ、近くで鑑賞することもできます。
その様子を遠くから見つめる人々も含め、まさに空間全体でアートを楽しむ雰囲気が伝わり、いつまでも飽きずに眺めてしまいました。

散策に疲れたらカフェでランチやスイーツを

寺家回廊の事務局でもあり、普段から寺家町のギャラリーとして営業しているJIKE STUDIOには、ギャラリーの横にカフェが併設されています。

JIKE STUDIO内のギャラリーでは、ロンドン・台北・バリ・上海でも個展を開催し、海外でも注目を集めるアーティスト、あやいろさんの新作絵画展「あそぶこども」の展示が行われていました。
里山の風景のなか、遊びを工夫する昭和の子どもたちがテーマに描かれた、あざやかな色彩の作品が鑑賞できます。

ギャラリー横にあるカフェでは、発酵玄米と、天然酵母のパン、寺家町で採れた新鮮な野菜をふんだんに使用した日替わりメニューのランチが食べられるほか、こだわりのスイーツをいただくことができます。

イベント中で店内は大盛況だったので、今回はドリンクをテイクアウトして外でいただきました。

ていねいに淹れられたコーヒーと自然の甘みがあふれるぶどうジュースで、散策の休憩にほっとひと休みできました。次回はぜひランチを食べに来たいです。

横浜が誇る里山でのんびりした秋の休日を

日本の原風景が広がる里山、青葉区寺家町は、豊かな農作物が穫れる横浜の農業特区でした。また今回のイベントを通じ、多くのアーティストが地域の財産として大切に守り育てるモノづくりとアートの拠点でもあることを知りました。

寺家ふるさと村が持つ様々な魅力にすっかり引き込まれてしまい、今後も寺家エリアは私の中で青葉区で一番注目のスポットとして目が離せません。

今年で16回目を迎えた寺家回廊は、来年以降も盛り上がりを見せてくれそうです。
横浜の財産ともいえる里山へ、ぜひ全身でアートに触れる一日を過ごしに訪れてみてください。

Art&Craft 寺家回廊 16th
住所:横浜市青葉区寺家町
開催期間:2022年10月28日ー10月30日

寺家町へのアクセス
東急田園都市線青葉台駅北口よりバス
鴨志田団地行き 終点「鴨志田団地」下車
寺家町循環 寺家町内のバス停下車

小田急線柿生駅北口よりバス
桐蔭学園行き「早野」下車
市が尾駅行き「早野」下車
鴨志田団地・寺家町循環 寺家町内のバス停下車

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。